どうも、双極性障害と戦うブロガー星野 良輔(@HossyMentalHack)です。
うつ病を始めとする精神疾患は、医師の主観で診断されます。
血液検査の結果…CTの結果…MRIの結果…うつ病。という話にはならないのです。
精神科医は、症状を確定させることはありません。というか、確定できないんですよ。
治療法はいっぱいあるんですけどねぇ…。
今はまだ、客観的に診断する技術がないのです。
光トポグラフィー検査というものが、脳の血流を見てうつ・躁うつ・統合失調症・健常の4つで診断しますが、あれはあくまで「傾向」を見るものですから、客観的診断というのはあまりに弱々しいです。
そこで、超気になるニュースが入ってきました。
血液検査でうつ病が診断できるようになるかもしれないというもの。
このニュースを見たとき、期待と不安が入り混じる複雑な心境になりました。
血液検査で、うつ病がわかる!?
1万円から2万円程度での計測が可能となり、実用化も視野に入った。HMTによるとうつ病を拾い上げる「感度」は80%以上、うつ病でない場合にうつ病と診断されない「特異度」は95%を超える。https://t.co/smXqRxNanj
おぉ、信頼性も高め?
— 星野 良輔 (@hossy_fe_ap) 2016年11月25日
今も精神科の受診に拒否反応を示す人はいる。血液検査でうつ病の可能性が分かるようになれば、内科医でも早期に診断でき、精神科を紹介できるほか、患者自身も自分の状況を正確に把握できるようになる。
効果が数値で分かるため、抗うつ薬を適切に利用でき、治療期間を短くする効果も期待できる。「EAPでうつ病診療は変わる」と川村氏。HMTでは今年度よりEAPを試行する医療機関数を増やし、19年をめどに保険収載を目指す。
引用:日本経済新聞
引用したのは2年前の記事です。
このときすでに、コストが1例140万円程度かかるものから、新しい手法で1~2万円程度まで抑えることに成功していたとのこと。
19年度には保険適応したいと書いてあるので、もうすぐそこまできていますね。
PEAは健康者に比べうつ病患者で低値を示すことが臨床研究の結果から示されており、うつ病の血液検査に応用可能なバイオマーカーになりうるという。https://t.co/QA7m3Vx2fE
おぉ、ついに…客観的指標が…?
— 星野 良輔 (@hossy_fe_ap) 2016年11月25日
そしてつい最近出た記事では、研究試薬キットが完成してテストを目的とした提供を開始するとか。
精神疾患の信頼性の高い客観的診断が近づいてきています…!
PEAとは?
PEA(Phospho-Ethanol-Amine)は分子量の小さな化合物で、脳内に多く存在するリン酸アナンダミドから作られる物質です。
リン酸アナンダミドはそれ自体は活性を持たない物質ですが、アナンダミドとPEA(リン酸エタノールアミン)に分解されます。アナンダミドは主に脳の神経伝達物質の1つで、「快感」「喜び」などといった感情に関わる物質です。
「快感」「喜び」の感情に係る物質。これだけ覚えておけば良いですよね(笑)
嬉しい楽しい! と思える感情がスポッと抜けていく感覚は、うつ病などの精神疾患にかかったことがある人ならわかるでしょう。
私も冬になると感情を無くしてしまい、ベッドの中で現実逃避をしてしまいます…。
うつ病人100のうち95人の「偽うつ病」を見抜けるというすごさ
うつ病を拾い上げる感度はもう少しほしいところですが、うつ病を95%の確率で否定できるのはすごいですよね。
といった話は結構聞くんですよ。
双極性障害は、発見まで8年かかるといったデータもあるほど、うつ病と切り分けが難しい病気のようです。
統合失調症とか、適応障害とか…他にも症状が被ることが多いですからね。
でも、うつ病がきっかり否定できれば、ターゲットはより明確になります。きっと、双極性障害の発見期間もぐっと短くなること間違いなし。
PEAの測定は、双極性障害にも有効みたい
うつ病が否定できることによって、双極性障害の発見が早まるかも?と書きましたが、普通に双極性障害の測定にも使えるようです。
PEAはうつ病だけではく、双極性障害(躁うつ病)においても異常値を示すことが報告されています。
双極性障害は、躁状態(気分が高揚する)とうつ状態(気分が落ち込む)を繰り返す疾患ですが、躁状態においては血液中のPEAは上昇する傾向があるようです。
健常者の血液中のPEA濃度は2.0~3.0μMと紹介しましたが、躁状態の患者さんでは血液中PEA濃度は3.0μM以上に上がることがあります。
これ、なにげに面白くて、ただ診断するだけではなく、症状の経過を観察できます。
つまり、PEA濃度の変化によって、うつの治療が進行しているか後退しているかがわかるのです。
これまで、精神科医の勘に頼ってきた部分がより明確に。精神科医に対する信頼も上がりますよね(笑)
うつの進行度が分かることの便利さ
血液検査の結果でうつの進行度がわかるなら、患者が嘘をついて元気にふるまっているな…ということも、精神科医には筒抜けになります。
うつなひとは、自分が病気であることを否定したがって、人前で強がってしまうものなのです。
これは、精神科医の前でも変わりません。
私もその傾向があって、うつ状態で、友人と会ってもおそらくバレはしないでしょう。
精神科医が見抜けないことが問題なのでは?とも言えますが、彼らも忙しいので、いちいち患者のことを真剣に見てられません。
実際、診察の時間も2~3分ってのが定番ですからね。これは診療報酬の問題が深く絡んでいるようなのですが。
それはともかく、進行度が分かるということは、患者の心情をより深く読めるということに繋がって、診察の精度が上がることが期待できます。
「本当のうつ病がわかる」ことは患者を幸せにするの?
うつ病ではないと95%の確率で否定できる…か。
客観的指標の導入は、患者にとって本当に幸せなことになるんだろうか。
— 星野 良輔 (@hossy_fe_ap) 2016年11月25日
客観的指標の導入は、「うつ病ではないただのノイローゼ」をあぶり出すことになる。
「うつが証明」される世界になると、「うつ病じゃないけど症状はうつ」な人にどう対応するんだろうか。
— 星野 良輔 (@hossy_fe_ap) 2016年11月25日
PEAによる血液検査以外にも客観的な診断が下せるものがこれから先、もっと出てくるかもしれません。
精神科医の誤診を防ぐという意味では、大きな進歩ですが、患者にとってそれは本当に幸せなことなのでしょうか。
うつ病は甘えではありませんが、うつのような症状が出ているけど
となってしまった患者を考えるととても恐ろしい。
「客観的診断」はある意味、大義名分を生みます。
例えばあなたが会社勤めをしていて、医師の問診の結果、ほぼうつ病で間違いないと言われたとしましょう。
しかし、血液検査の結果はうつ病ではありませんでした。するとどうでしょうか?
うつ病ではなく、ただの甘えというバッシングは今より確実に強くなります。
もちろん、客観的な診断が間違っている可能性だってあります。
でも、今の精神科医療の精神科医の主観による診断よりも血液検査の結果という言葉のインパクト、説得力はとても大きい。
確実な治療ができる可能性が高くなる一方で、これまで偽物として潜伏していた人はあぶりだされる。
当人は、うつ病になりたくてなっているわけではないのです。
思い込みで症状が出ているのだとしても、甘えだとしても、つらいもんはつらい。
社会に出てつらいなか働いている人からしてみれば、ふざけんなよって感じでしょうが、自分でもどうすることもできないのが心の病なんですよ…。
差別や偏見の解消には貢献してくれるかもしれない
一方、ポジティブな側面としては、無慈悲な差別や偏見がちょっとだけ軽減するかもしれません。
まぁ、「医師の問診の結果、うつ病」から「血液検査の結果、うつ病」に変わるだけで、「ほんとに病気なんだね」感がでるから、偏見と差別の解消にも役立ってくれることを期待してます。
— 星野 良輔 (@hossy_fe_ap) 2016年11月25日
先ほども言ったように、血液検査の結果という言葉のインパクトは大きい。
数値で示されるとなんだか納得しちゃいませんか?
こういった会話が成立するのは納得がいくでしょう。
でも、今現状の精神科医療は以下のようにしか説明できないのです。
そりゃ、うつ病は甘えって言いたくもなりますよね。
話し合いだけで?医師の勘だけでうつ病?って疑いたくもなる。
患者としても、いつの時代の医療なんだ? って感じですよw
私はじぶんの「うつ病」を確定または否定してみたい
精神疾患者にとって、病名の確定は悲願。
私も、主には双極性障害2型と言われてるけど、冬季うつ病や、普通のうつ病も視野に入れてます。…なんて、わけわからないこと言われてるので困ってます(笑)
— 星野 良輔 (@hossy_fe_ap) 2016年11月25日
これまで、3人の精神科医に見てもらいましたが、誰も「〇〇ですね!」とは言ってくれませんでした。
最も可能性が高いのは、双極性障害2型。とだけ。
つまり私は、いまだに何病かもわからずにもがき苦しんでいることになります。
これは他の精神疾患者にも言えることです。うつ病と言われようが双極性障害と言われようが、それは確定事項ではありません。
これまでも述べてきましたが、いまのところ、客観的に証明する手段がないからです。
ただ、うつ病も双極性障害も気分障害という大きな枠組みの中なので、基本的に大事だと言われることを守るようにしています。
同じ気分障害という枠組みなので、自分でできることは変わりません。
精神科医が、どう処方薬をコントロールするかで変わってくるもんでしょう。
それでも、未確定と確定じゃ大きな差があるんだよなぁ。気持ち的に。
— 星野 良輔 (@hossy_fe_ap) 2016年11月25日
さいごに:血液検査でうつが分かるようになる未来を楽しみに
うつ病が、血液検査でわかる未来がすぐそこまで来ているという話をしてきました。
精神疾患に客観的診断が加わると、差別や偏見の解消にも一役買ってくれるでしょう。
血液検査の結果、うつ病じゃなかった。とわかったら、症状が改善したという例も出てくるかもしれません。
人の心、思い込みの力というのはすさまじいものがあって、それはどんな抗うつ剤も効かなくしてしまうほど。
というような犯人捜しのようなものでなく、適切な治療のために、病気を確定させる方向で浸透していけばいいなと思います。
手放しに喜んで、「早くうつ病かどうか見てくれ!」と言えるんでしょうか。
今回のニュースでわかるのはうつ病かどうかであって、ほかの精神疾患まで否定することにはつながりません。
ただ、これを皮切りに技術の進化が進んで、精神疾患そのものを否定するほどの診断ができるようになったとき、いま精神疾患のひとは、喜んで腕を差し出すのでしょうか?
自分の病気が確定するんだ!という期待と、「あなたは精神疾患ではありません」というこれまでの治療人生を否定される地獄の宣告。
期待と不安が入り混じった微妙な気持ちであるというのが正直なところじゃないでしょうか。
追記:新しい情報がどんどんでてきてます
発表によると、九州大病院や大阪大病院、同センター病院を受診した抑うつ症状がある計90人の患者から採血し、うつ病症状の重さと血中代謝物との関係を調べた。
その結果、症状の重さによって、血液の中で量が変化する20種類の代謝物を特定した。特に「3-ヒドロキシ酪酸」や「ベタイン」など5種類は3病院のいずれでも強く関連していることが確認された。
さらに「抑うつ気分」「罪悪感」「自殺念慮」(自殺したい気持ち)など症状別で量が変化する代謝物が異なることも分かった。
九州大大学院医学研究院の加藤隆弘・特任准教授(精神医学)は今後、大規模な研究での検証が必要とした上で、「うつ病の早期発見や病態メカニズムの解明、新薬開発につながる可能性もある」と話している。
引用:毎日新聞
症状別に代謝物の変異まで特定できるようになってきましたね。
引用文にもありますが、気分によって代謝物の変異が測れるというのは、うつ病解明にもつながりそう。
今後の流れが気になるところです。